【松尾匡対談】大石の「MMT×マルクス」モデルを、松尾匡がゆるーく採点

こんにちは。
大石あきこです(*^ ^*)

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以下、松尾匡さんとの対談の、試し読み記事です!
(ブログでは図の画質を粗く加工しています、ご了承ください。)


大石の「MMT×マルクス」モデルを、松尾匡がゆるーく採点

 

大石 前の節までにお話してきたことのまとめを、私の言葉で言えば、富裕層のためにやるカジノ開発や戦争ビジネスをやめて、庶民のための生活や娯楽に労働を移行させる。そのためには庶民が団結して、職場も政治も税制も自分たちの手に取り戻さなきゃいけない。そうできたとき、失業もなくせる、デフレもインフレも起きないってことです。
MMT創始者のミッチェル教授が来日したとき、「私はマルクス主義者です」って自己紹介したら、ミッチェルさんのほうも「MMT comes from Marx」(MMTはマルクス主義から生まれた)って返してくれました。やっぱりな!と。

だから私は、所得や富の分配のあり方を公正にしようとするMMTと、労働者が団結して富を取り戻そうとするマルクスをくっつけたモデル図を作れないかなと考えたわけです。聞いてもらえますか? いったんここでは「MMT×マルクス」モデルと呼びます。

 

松尾 ほう。

 

大石 みんなが望みさえすれば、住民に必要なものを届けられる、労働者への分配率をあげていける、経済格差をなくしていける。労働運動も同じムーブメントの中に位置づけられる。これをみんなに気づいてほしいと思いまして。

 

松尾 それは素晴らしい着想です。

大石 で、このモデルをですね、松尾さんにゆるーく採点してほしいんです。

松尾 また炎上企画を持ち込んできましたねぇ。わかりました、一緒に見てみましょう。


大石
 まずは、現状をあらわすために、経済格差のイメージ図を作りました。

 

松尾 シーソーで、庶民が富裕層に負けている。

大石 はい、人数は庶民のほうがずっと多いのに、お金の格差によって支点が偏っていて、かつ重みも小さいので負けている、というイメージです。


松尾
 なるほど。顔の大きさを「重み」と表現しているようですね。ではこのシーソーはきっと支配層と、被支配層を表現したいのでしょうね。


大石
 そのとおりです。


松尾
 本来は、富裕層だからといって支配階級とは限りませんが、富裕層はお金を貯めて事業を興して支配階級になりやすいので、単純化するとこういう傾向ですよ、という表現なんでしょう。


大石
 そのとおりですー! 単純化してしまうと見えなくなる「中小の自営」「農家」「管理職」「年金生活者」など、様々な生業がありますので、「自営業者はみんな支配者階級なのか」と心配をする人がいるかもしれません。その場合は、松尾さんのご本『これからのマルクス経済学入門』で「階級」の捉え方を詳しく例示されていてわかりやすいのでご参照いただきたいです。


松尾
 お褒めいただきありがとうございます。実社会で、「支配階級」にあたる、生産に関する決定権を持った人たちはごくごく一部なので、この図でも「富裕層」はごくごく一部で、大多数は「庶民」か、それに近い存在と見るのがいいでしょう。


大石
 続いて、お金の格差によって、「実体価値」の享受にも格差や問題が生まれていることを、以下の図に表しました。

松尾 「実体価値」とは何でしょうか?

大石 お金という紙切れ(または電子情報)に対して、実体のある価値を指します。人の手によって作り出される商品やサービス。例として、図では、フォークのアイコンで食べ物、車いすアイコンで介護などのサービスを表しています。


松尾
 まぁ、こんな言葉遣いすると、マルクス経済学の人には相当つっこまれそうだけど、大石さんの説明したいことを単純化した図解ということで、いいでしょう。王冠のアイコンは、富裕層のところにしかないので、きっと、富裕層向けの贅沢(ぜいたく)な商品・サービスでしょうか。カジノとか。


大石
 そうです、庶民に不必要な商品・サービスも含めて、労働によって生み出されるものはすべて「実体価値」としています。お金で決済されるので、富裕層側に「実体価値」の量も内容も偏ってしまう。


松尾
 さては「不必要な」王冠アイコンを消していくのを狙っていますね……。


大石
 さすが松尾センセ。だって実体価値はすべて、労働から生まれているわけですよね。その労働が、支配階級や富裕層が求めることにばかり向けられていて、庶民に必要な衣食住や、福祉サービスは、二の次どころか見捨てられようとしています。


松尾
 そうですね。


大石
 そんな社会では、ほとんどの労働は、本末転倒な、つまらないものになってしまいます。食べ物の製造や介護など、たとえ人々に必要とされている労働であっても、決定権がなくて、他者の意のままの労働である限りは「疎外された労働」。だから下図のようにしかめ面の労働者を、その労働者が生み出した実体価値の上に置きました。また、支配階級・富裕層が、まっとうな雇用もしない、社会に必要な投資もしないので、失業・半失業が生じ、社会に「生産余地」を生んでいることも表しました。

松尾 大石さんが何を変えたいのかがよくわかる説明と図ですね(笑)。

大石 はい(笑)。「格差」「疎外された労働」「失業・半失業」「不要な実体価値の生産」「ムダな生産余地」すべてを変えたいです!


松尾
 大事なことだと思います。自殺率と失業率には明らかな相関関係があります。経済政策で人は死ぬんです。だからこそ、誤った経済政策を変えていかなければいけませんね。


大石
 概要説明はほぼできたので、以下、富裕層寄りの国(政府)を加えた現状図からスタートします。

松尾 さて何が起きるんだろう?

大石 「お金」の分配率を変えるムーブメントを通じて、「格差」をなくすとともに、そこから起きる社会問題(「疎外された労働」「失業」「不要な実体価値の生産」「生産余地」)をなくすための、反緊縮の3つの経路を説明します。


松尾
 はい。


大石
 ちなみに、「格差をなくす」といったときに、「がんばって蓄財した富裕層への権利侵害だ」といった論調も出てくるので、念のために説明しておくと、その富裕層が蓄財したものは労働者(≒庶民)からの搾取によって生まれているので、労働者側に実体価値を再分配することや、労働者が生産の決定権を取り戻して楽しく働けるようになることは、正当なことといえます。


松尾
 承知しました。


大石
 「お金」の分配を変える3つの経路は、矢印①②③です。

①が賃上げ、②が庶民への政府支出、③が富裕層に課税、です。

 

大石 まず、経路①は「お金」が、支配階級から労働者(庶民)に直接に移る経路。ベースアップをはじめとする労働運動による賃上げですね。私は、この経路が一番大事と思っています。①を実行したらどうなるでしょう。

ちなみに元の図は以下

大石 賃上げをしたら、労働者(庶民)の「お金」の取り分が増えて、庶民が手にできる実体価値も増えます。


松尾
 シーソーの支点が左に移動して、格差が是正されていますね。


大石
 しかも、富裕層にムダに積まれていた「お金」が庶民の手に渡ると、必要な消費に使われるようになって景気が良くなるので、「生産余地」が縮小して失業・反失業状態の人が減ります。


松尾
 でも庶民がこの程度の是正では「まだまだ!」言うてはりますが。


大石
 だって、まだ王冠マークあるし、失業もなくなってないし、富裕層が大きな顔を……。そこで、大きな顔の富裕層には退出を願い、各企業を従業者の完全自主生産に持ち込んだ状態が下図! 

松尾 「闘争勝利」して格差なくなってる!

大石 各企業の従業者の自主生産なので、生産のしがいのある実体価値を、職場で民主的に話し合いながら生産します。介護の人手も十分足りています。


松尾
 凝った図を作りましたね。僕も夜な夜なパワポ職人になるほうだけど、大石さんもたいがいですね。


大石
 むちゃ時間かけてますよ、これ……。


松尾
 でもまだ失業は出ちゃうのですね。失業者は渋い顔してる。


大石
 これは戒めのようなものです。もし各企業の従業者がそれぞれ設備投資などの判断をするだけだと、完全雇用には足りないってことがあると思うので。


松尾
 ああそうですね。たとえ完全雇用だとしても、それぞれの企業の判断で設備投資するのが、本当に世の中に必要なものかどうかわからないということもありますね。


大石
 政治的にみんなが団結できて、はじめて完全雇用は達成できるかなと。まあ、今は労働運動が弱すぎるので、経路①-2も現状では妄想レベルですが。


松尾
 労働運動の支援もがんばりましょう。


大石
 はい。続きまして経路②を考えます。政府が庶民に支出する、いわゆる反緊縮と言ったらこれを指す人は多いですよね。

ちなみに元の図は以下

大石 つまり、経路②は、国(政府)が、庶民のお金の分配率が高まるように、庶民にたくさんお金を回まわすことです。日本政府は通貨「円」の発行権を持っているので、財源を心配する必要がないことは、前の章の解説を読まれたかたには、ご理解いただけるかと思います。

特に、介護サービスなど社会に必要な分野での賃金向上や利用料を政府が負担するなど、サービスの利用促進につながる配り方をすることで、介護サービスの供給量も増えるし、庶民の利用量も増えるので、うまく生産余地も埋まっていきます。そんな配り方を完全雇用になるまでやった図です。格差は是正されています。

松尾 庶民は「まだまだ!」と言っていますね。


大石
 だって、まだ王冠マークあるし、疎外労働だし、富裕層が大きな顔を……。やっぱ経路②だけでは手ぬるい。


松尾
 じゃあ、経路③はやはり激しいものになりそうだなぁ。


大石
 はい、富裕層から税金を収奪する経路です。


松尾
 (笑)

ちなみに元の図は以下

大石 うーん、やはり富裕層から税金を取ると即座に富裕層向けの労働配分が減るので、不要な「王冠」アイコンが減って気分が良いなぁ。

松尾 大石さんのいう実体価値の、社会全体での生産構成が、富裕層向けから庶民向けの生産物やサービスにシフトするという点が大事ですね。ところで、この図は、国が「富裕層に徴税」しただけではなく、徴税したお金を「庶民に使う」、いわゆる「再分配」にしてあるんですね。


大石
 この図は、もともと、「富裕層への徴税」だけを説明するつもりだったし、「再分配」にするつもりはなかったんです。だって、MMTの「税金」の考えに基づけば「政府は自分でいくらでもお金を作れる」ので「税金は財源ではない」ですしね。でも、あえて付けました。


松尾
 なぜですか。


大石
 「富裕層から取り返したぞ!」って言いながらお金を使いたいからです。


松尾
 はっはっは。「収奪者から収奪したぞ!」


大石
 それと、MMTの理論が正しくても、現実の社会では、多くの人が「税金は格差是正、再分配の手段」と思っているのだから、そのように税金を機能させても良いと思います。


松尾
 大衆ムーブメントのモデル図ということなので、まあ、ええんちゃいますか。でも、まだ失業はありますね。富裕層がムダに積んでいたお金が再分配されて使われるので、もとのより失業は減ってますけど。


大石
 きょうびは設備投資がなかなか起こりませんし。職場や政治的な団結なくして、社会に必要な設備投資と完全雇用が達成されるわけがないと思いましてね。


松尾
 それに「そこそこ」というタイトルと、「王冠」アイコンを少し残しているのが気になりますが……。


大石
 ええ、続きがありまして・・・

 

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試し読み記事はここまで。

続きのラストの図は、ぜひ本を読んでくださいませ!!

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著者 大石あきこ(おおいしあきこ) 1977年大阪市生まれ、大阪育ち。2002年大阪府入庁。就職氷河期、イラク戦争、リーマンショック、3・11大震災と、時代の波に翻弄されながら、ときに抗いながら、16年間働く。2018年10月末退職し、大阪市淀川区で「音くらしデザイン研究所」設立。2019年春の大阪府議会議員選挙に、淀川区から立候補するも落選。小学生の娘と夫の3人暮らし。
著者 大石あきこ(おおいしあきこ) 1977年大阪市生まれ、大阪育ち。2002年大阪府入庁。就職氷河期、イラク戦争、リーマンショック、3・11大震災と、時代の波に翻弄されながら、ときに抗いながら、16年間働く。2018年10月末退職し、大阪市淀川区で「音くらしデザイン研究所」設立。2019年春の大阪府議会議員選挙に、淀川区から立候補するも落選。小学生の娘と夫の3人暮らし。

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