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2025年6月16日【大石あきこ・質問主意書】11万床の病床削減という政党間合意を踏まえた政府の対応に関して ~11万床が「余剰」というのはウソ~

 2024年6月16日に、11万床の病床削減という政党間合意を踏まえた政府の対応に関する質問主意書を提出しました。

 

11万床の病床削減という政党間合意を踏まえた政府の対応に関する質問主意書

 

2024年6月27日に、政府の答弁書が送付されました。 

 

11万床の病床削減という政党間合意を踏まえた政府の対応に関する質問に対する答弁書

 

質問と答弁が別ページになっていて読みにくいので、

下の方で、質問と答弁を1対1に並べていますが、まずは【まとめ】を読んでほしいです。

 

【まとめ】

自民、公明、維新は、6月6日に11万床の病床を削減する合意書に署名を交わしました。「余剰病床」を削減することで、医療費を1兆円削減でき、保険料負担を軽減できるという主張をしています。

それに基づき、6月13日の政府の「骨太の方針」にも、病床削減の方針が盛り込まれました。

維新は、この参議院選挙でも大々的に病床削減を争点にしようとしています。しかし、「11万床」が余剰である根拠は示されていないため、今回、質問主意書を出しました。

答弁書で分かったことは、

・自公維合意の「11万床」が余剰である根拠はなく(厚生労働省は現状の病床数は、トータルとして余剰はないと評価している)

・「余剰」とされた数字は、地域偏在により「余剰」とされる病床のみを合計した数字である

ということです。11万床が余剰というのはウソなのです。

病床数は今でも足りていない地域は多く、削減だけしたら地域の医療の崩壊は不可避です。

そもそも、6割以上の病院が深刻な赤字となっており、地域の病院がある日突然なくなってしまう危機が訴えられています。やるべきは、公定価格を引き上げ、医療従事者の賃上げを国費で行い、病院を国が守ることです。

病床の削減は、お米不足をまねいた「減反」と同じであり、必要な時の医療を奪うことは許せません。

 

以下、資料を掲載します。

① 6/6 自公維「11万病床削減」合意文書

以下の写真が自公維の合意文書です。

11万床については、「一般病床及び療養病床の必要病床数を超える病床数約56,000床並びに精神病床の基準病床数を超える病床数約53,000床を合算した病床数(厚生労働省調べ)。 」であるとしています。

② 6/13 「骨太の方針」にどう反映されたか

11万床という数字は入っていませんが、新たな地域医療構想までの2年間で病床削減を行うと明記されました。

③ 維新は、参議院選挙の争点にしている

維新は、選挙の争点に、「社会保険料を下げる改革」として、医療費を4兆円削減すると主張しています。その内訳として「過剰な病床数」の削減で1兆円削減できると言うのです。

④病院の6割以上が深刻な赤字ー病床削減補助金に5万床が殺到している

「病床数適正化支援事業」という厚労省の事業に、5万床の計画が出されたことがニュースになりました。

この事業は、「経営状況が厳しい医療機関において入院医療の提供を継続していただくための支援」という位置づけで、「1病床削減したら約410万円あげるから病院を継続してね」というもの。

結果、

病院から「53,576床」の計画が出され、

第1次内示は、7,170床、約294億円(令和6年度予算繰り越し分)

第2次内示は、4,108床、約168億円(他の事業の残余活用)

合計 11,278床、約462億円が執行される予定となっています。

 ↑これに飛びついたのが維新です。

 

しかし、これは病床が余剰だということではなく、病院の深刻な状況を示すものです。

病床が余剰ではないことは、次の⑤の「地域医療構想」の評価を見てください。

⑤これまでの地域医療構想による削減と評価

政府は、「地域医療構想」により、主に慢性期病床を減らし、2025年に119万床程度にする目標で病床削減や、在宅や介護施設への移管を進めてきました。

その結果、2023年年度の病床機能報告では、2025年の見込みは119万床となり、必要病床数とトータルで同等になることが報告されました。2024年12月18日には、厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」のとりまとめでは、「2025年の必要病床数の方向性に沿って、全体として地域医療構想の進捗が認められる」とされたところです。

つまり、厚生労働省の評価としては、現状の病床に余剰や、不要なものはないということになります。

その評価をもとに、次の2040年の必要病床数を見込んだ新たな地域医療構想を進めようとしていたのです。

⑥6/27 大石質問主意書への答弁

では、何を根拠に「不要となると推定される11万床」という数字が出てきたんでしょう。

病床機能報告で余剰があるとされた地域の病床数「のみ」を積み上げた数だというのです。ダメですよね?不足してる地域もあるのに、「余剰」だけ削減したら。

 

以下、原文をもとに質問と答弁を並べて見やすくしたものです。

11万床の病床削減という政党間合意を踏まえた政府の対応に関する質問主意書質問主意書

(大石あきこ質問主意書)

 

 2025年6月6日に自由民主党、公明党、日本維新の会の3党は、「人口減少等により不要となると推定される、約11万床の一般病床・療養病床・精神病床といった病床について、地域の実情を踏まえた調査を行った上で、2年後の新たな地域医療構想に向けて、不可逆的な措置を講じつつ、調査を踏まえて次の地域医療構想までに削減を図る」との合意(以下、「自公維合意」という。)を行ったと承知している。そして、同月13日に閣議決定された、経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)では、「約11万床の」という数字を除き、同様の文言が追加された。

これに関連し、政府に対し質問する。

 

一 この自公維合意では、不要となると推定される約11万床の内訳について、「一般病床及び療養病床の必要病床数を超える病床数約56,000床並びに精神病床の基準病床数を超える病床数約53,000床を合算した病床数(厚生労働省調べ)。 」であるとしている。

 この数字に該当する厚生労働省調べとは、それぞれどの調査と考えられるか。

 

二 現行の地域医療構想においては、2025年時点の必要病床数を119万床程度とする目標としている。

 厚生労働省の新たな地域医療構想等に関する検討会による新たな地域医療構想に関するとりまとめ(令和6年12月18日)では、「病床機能報告上の病床数について、2015年から2023年にかけて、125.1万床から119.2万床になり、2025年の必要病床数である119.1万床と同程度の水準となっている。」と評価している。これによると2025年の必要病床数を超える病床はせいぜい1,000床程度であり、自公維合意の言う不要となる病床は約53,000床とは言えないのではないか、政府の見解を示されたい。

 

三 自公維合意の「一般病床及び療養病床の必要病床数を超える病床数約56,000床」があるという推定は、新たな地域医療構想に関するとりまとめの評価を否定するものではないか、政府の見解を示されたい。

(答弁)一から三について

御指摘の「一般病床及び療養病床の必要病床数を超える病床数約56,000床」に係る「厚生労働省調べ」については、厚生労働省において、「医療施設等経営強化緊急支援事業実施要綱」(令和7年4月1日付け医政発0401第5号厚生労働省医政局長通知別紙) に基づく「病床数適正化支援事業」を実施し、医療法(昭和23年法律第205号)第7条第2項第5号に規定する一般病床(以下一般病床」という。)及び同項第四号に規定する療養病床(以下「療養病床」という。) の数の適正化を進めるため「病床数・・・の削減を行う」医療機関に対し、「病床数適正化支援事業に係る事業計画(活用意向調査) の提出について」(令和7年2月21日付け厚生労働省医政局地域医療計画課事務連絡) において「事業計画」の「提出」を求め、都道府県を通じて補助を行うこととしていたところ、当該医療機関からの「事業計画」の「提出」の状況を踏まえて、

 

令和6年4月時点における一般病床及び療養病床の数(令和7年時点において必要な病床の数(同法第30条の4第2項第7号イに規定する将来の病床数の必要量をいう。以下同じ。)を超える構想区域(同法第30条の4第2項第7号に規定する区域をいう。以下同じ。)が所在する2次医療圏(同法第30条の4第2項第14号の区域をいう。以下同じ。)におけるものに限る。)

令和7年時点において必要な病床の数(当該2次医療圏に所在する構想区域におけるものの合計に限る。)との差を調べたものであると承知している

 

 一方で、御指摘の「評価」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の令和6年12月18日に公表された「新たな地域医療構想等に関する検討会」の「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」においては、病床機能報告(同法第30条の13の規定に基づく、全国の病院又は診療所であって一般病床又は療養病床を有するものの管理者からの都道府県知事に対する病床機能に係る報告をいう。)により把握した令和5年7月時点における一般病床及び療養病床の数と、令和7年時点において必要な病床の数を基に、「2025年の必要病床数の方向性に沿って、全体として地域医療構想の進捗が認められる」とされているとおり、地域医療構想が全体として進捗している旨の評価がなされているものであるところ、

 

その上で、御指摘の「推定」(※維新の推定)は、構想区域及び2次医療圏に着目して調べたものであり、御指摘のように「推定は、新たな地域医療構想に関するとりまとめの」評価「を否定するもの」ではないと考えている。

 

また、御指摘の「精神病床の基準病床数を超える病床数約53,000床」に係る「厚生労働省調べ」については、同省において、令和5年10月時点における精神病床(同法第7条第2項第1号に規定する精神病床をいう。以下同じ。)の数と、第8次医療計画(令和6年度から令和11年度までを計画期間とする同法第30条の4第1項に規定する医療計画をいう。)における精神病床に係る基準病床の数(同法第30条の4第2項第17号に規定する精神病床に係る基準病床数をいう。)との差を調べたものであると承知している。

四 自公維合意によれば、約11万床について「調査を踏まえて次の地域医療構想までに削減を図る」ということだが、政府として次の地域医療構想(2027年4月スタート)までに、削減を図る数値の目安を設定するのか。

それとも、「調査を踏まえて」ということであれば、約11万床削減という数値の目安は設定しないと理解して差し支えないか、政府の見解を示されたい。

(答弁)四について

政府としては、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(令和7年6月13日閣議決定) において、「新たな地域医療構想に向けた病床削減」について、「人口減少等により不要となると推定される般病床・療養病床・精神病床といった病床について、地域の実情を踏まえた調査を行った上で、2年後の新たな地域医療構想に向けて、不可逆的な措置を講じつつ、調査を踏まえて次の地域医療構想までに削減を図る」としているところ、これに基づき、今後、地域の医療提供体制への影響、医療機関の意向等に留意しながら、必要な調査を行うこととしており、お尋ねについて、現時点で予断をもってお答えすることは困難である

(解説)

文章が難しいですが、つまり、

自公維合意で、「不要となると推定される約11万床」のうち、「一般病床及び療養病床の必要病床数を超える病床数約5万6千床」は、

 

令和6年4月時点の調査で(2024年病床機能報告※まだ未公開)

令和7年(2025年)時点において必要な病床の数を超える構想区域が所在する2次医療圏について

a)令和6年4月時点における一般病床及び療養病床の数

b)令和7年(2025年)時点において必要な病床の数

との差を調べた

 

とあり、病床数が「余剰」となる区域「のみ」を合計したら5万6千床となるということが書いてあります。

これが④の病床削減補助金で計画が出された5万床に近いので、削減できるだろうというのです。

 

ちなみに、

令和5年4月時点の調査では(2023年病床機能報告)

 

令和7年(2025年)時点において必要な病床の数を超える構想区域が所在する2次医療圏について

a)令和6年4月時点における一般病床及び療養病床の数

b)令和7年(2025年)時点において必要な病床の数

との差は、「68,061」床ありますが、

 

令和7年(2025年)時点において必要な病床以下の構想区域が所在する2次医療圏について

a)b)の差は、「-70,430」床となります。

 

地域偏在する余剰分だけ削減したら、不足分がカバーされません。こんなこと進めたらヤバいでしょ。

だから、問4では、11万床という数値目標については、「予断をもってお答えすることは困難」としか答えられないのです。自公維の「1兆円医療費削減」はやったらダメ。

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