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2022年4月1日【内閣委員会】経済安保法(審議③)

上野委員長 次に、大石あきこ君。

大石 ありがとうございます。れいわ新選組の大石あきこです。

 経済安全保障法案について御質問します。

 これまでの質問で、私は確かに、この国の国民や働いている人たちは経済的に大きな危機の中にあると思います。この原因は何なのかというところで、日本政府の国策に問題があるのではないか、アメリカに追随して、グローバル競争、激しい市場競争に乗ってきた、生産や供給を他国に依存するということをむしろ積極的に進めてきた、ここが大きな原因ではないかというつもりで質問をしてきました。

 この法案の質疑やいろいろなところでも、他国に技術を取られたみたいなお話もありますが、これは逆切れではないかというところです。とりわけ、中国をやり玉に上げるという話も出ています。こういったことは、緊張を高めてマイナスですし、そもそも、自国の失策というところを反省するものではなく、ごまかすものではないか、そのように考えます。

 そして、小林大臣も、本日もお答えされていましたけれども、TPPなどで今後も取組を進めていくと言っていらっしゃいますし、民営化というものもばんばん推進されていますし、そういったところから改めるというのが、この国に生きる人々にとっての経済安全保障であると私は考えます。

 大臣からそういった部分での反省、対策というものをお聞きしたかったんですけれども、そういうものは聞かれませんし、法案にも、そもそもそのような哲学は見られません。哲学は見られませんでしたけれども、先日の連合審査の中で錯覚によるだましが見られたので、そのことについて御質問したいと思います。

 3月29日の連合審査で、立憲の落合経済産業委員の質疑において、萩生田大臣とのやり取りがありました。萩生田大臣が、この法案を作る際の問題意識を語っておられます。アメリカの世界観に従って我々も法律を作るんだなんという近視眼的な話ではないと、この法案を作る際の問題意識を語り、そして、こう言いました。日本は日本で独自に、やはり機微情報などが残念ながら特定国に流出して、そして類似産業が興ってその類似産業に追い越されていく、こういう経験をしてきましたので、かねてから問題意識を持っていましたと萩生田大臣が言ったんです。

 この発言は、本法案の特許手続を通じた機微な技術の公開や情報流出を防止するというのを念頭に置いた発言と解されますが、ここで伺います。萩生田大臣が言うような、日本の独自の機微情報が特定国に流出して類似産業に追い越されていくという経験というのは、事例がありますか。何の技術がいつどこに流れたのか、例を挙げてください。

小林国務大臣 お答え申し上げます前に、先ほど、本庄議員の経済安全保障重要技術育成プログラムに関する御質問におきまして、泉審議官より、今後、補助要綱等を作成すると答弁申し上げましたが、正しくは、今後、公募要領等を作成するですので、訂正をさせていただきます。

 お答え申し上げます。

 まず、萩生田大臣の特定国というものが何を意味しているかは分かりませんが、経済安全保障そのものについては、何か特定の国を想定しているものではないということは冒頭申し上げたいと思います。

 日本企業などが保有する機微技術情報につきましては、実際に、国外に流出をして、不正競争防止法違反などで検挙される事案も発生しているものと承知しています。

 近年の主な技術流出事案として、若干紹介しますと、大手化学メーカー従業員が、タッチパネルなどに使用される素材に関する勤務先の技術情報を国外企業の社員に開示をし、不正競争防止法違反で検挙されました。これは2020年の10月の事例。もう一つ挙げますと、電気通信機器製造販売企業社員が、光ファイバーに関する独自技術設計図を国外に所在する企業に開示をし、これも不正競争防止法違反で検挙。これは2018年10月。こうした事例が挙げられるところであります。

大石 不正競争防止法で検挙されたということなんですけれども、この法律と本法案では保護すべき法益は違いませんか。それから、追い越されたと萩生田大臣はおっしゃっているんですけれども、実際に追い越されたという認識なんでしょうか。

小林国務大臣 まず、委員のおっしゃる法益というものの定義というものがちょっと定かでないので分かりませんけれども、今回の法案におきましては、特に、特許の非公開制度のところにおきまして、これまでも議論になっている技術流出の防止、これは特許非公開だけでやれるものではないですけれども、既に法整備の必要なくやってきている外為法の運用なども含めまして、その一つとして位置づけられると思います。

 具体的に、類似産業に追い越されていくということにつきましては、結果として、いろいろそういう見方もできるんでしょうけれども、個々の事案について、それが結果として、その産業全体の、追い越された、あるいは追い越されていない、そこにどう結びついているかというのはなかなか判断が難しいと思います。

大石委員 私は、萩生田大臣がこの法案の審査の中でおっしゃったということなので、内閣としてのお考えとして一緒なのかなと思っているんですけれども、先ほども、萩生田大臣が言った特定国というのは分からないということでしたし、追い越されるということに関しても、具体的な事例があるというふうにお答えはないので、萩生田大臣の答弁が間違っていたということなんでしょうか、それとも意図的なものなんでしょうか。

小林国務大臣 別に、間違っていたとは思っておりません。

 申し上げますと、例えば不正競争防止法の法益というものが具体的に何なのかという定義をちょっと教えていただければと思うんですが、端的に申し上げると、不正競争防止法も、あるいは今回の特許非公開を始めとするものにつきましても、機微情報の流出を防止するという目的では一致していると思います。

 あとは、委員からの御質問ですので、ざっくりと例えば例を申し上げると、白物家電などにつきましては、過去の例を見て、日本がやはり一時期は非常に世界をリードするようなときもありましたけれども、それが、他国にそうした技術が、技術情報などが、あるいは人が流れていくことによって日本の立ち位置というものが相対的に低下をした、そういう事例はほかにもあろうかと思います。

大石 すごく大事なことをおっしゃっていると思うんですね。白物家電などで日本が追い越されているというお話では非常に一般的なことだと思うんですよ。それを大臣も言及されているんですよ。

 これは何でかというと、国策として生産拠点を海外に移してきた、それが問題なんじゃないんでしょうか。それを萩生田大臣が、特定国に流出して、類似産業に追い越されていくという経験ということを、事実が、担当の大臣が見られないのに、おっしゃっている。

 不正競争防止法ではカバーできない問題が今回の法案でカバーできるようになるという御説明もないので、この法案を最も重要な法案として立てていく事実というものがないのではないでしょうか。

小林国務大臣 まず、最初の議員の御指摘にお答えしますと、別に、これは個々の事例によって様々ですけれども、必ずしも、海外に生産拠点が移ったから我が国の産業競争力が落ちて抜かれていったというわけでもないと思います。

 議員の御質問につきましては、ちょっともう少し具体的にしていただけるとお答えしやすいかと思いますので、よろしくお願いします。

大石 具体的なつもりだったんですけれども、時間もありますので、萩生田大臣の次の発言に移りたいと思います。

 本日、本庄委員もおっしゃっていて、やはり、マスクがない、注射針がないということを、この法案の審査の中で、その文脈でおっしゃっているということが問題だなと思いました。

 そもそもどういう御質問だったのかというと、立憲の落合委員が、この法案について、産業政策として国内回帰を目指していくのかという御質問だったんです。これは多くの国民が期待することなので、この質問への回答というのは非常に重大だと思うんですね。それで、コロナ禍を経験してというふうに萩生田大臣がおっしゃるんです。これだけの先進国でありながら、マスクがない、注射針がない、防御服がない、こんなことではけしからぬということで、やはり国内で作れるものはしっかり作っていこう、こういう方針を立てさせていただきましたと。

 日本で多くの国民が経験した、マスクがない、注射針がない、防護服がない、あったのは使えないアベノマスクと大阪では雨がっぱだけだったという、これが本当にけしからない状況なのは確かなんです。だから、萩生田大臣のこの答弁、非常にもっともらしいし、多くの国民が、そんな法案なら大事なんじゃないの、私たち国民の経済に安全をもたらしてもらうものではないのと誤解、誤解といいますか、だましやないか、うそやないかと思っているんですけれども、特定重要物資に、先ほど本庄委員もお尋ねされましたけれども、入らないですよね、萩生田大臣がおっしゃっているものは。

小林国務大臣 入る入らないということを、今予断を持ってお答えする段階ではないということです。

大石 でも、多くの国民は、コロナが特に発生した当時、一箱二千五百円だとか、そういう状況で、マスクがなくて、ドラッグストアに並んで、でも、並んでも確保できないというような状況で、すごくひどい目に遭いました。これを二度と繰り返さなくて済むんだなという期待を受けてこの法案が支持されるとしたら、これはだましだと思うんですね。というのも、今、予断なく考えていきたいということなので、決まっていないということなので、少なくともすぐには対応できない、必ずしも排除しないかもしれないぐらいのものを主な例のように持ってくるというのは、これはだましと言えるものです。

 このような錯覚を使って、さらに、法律の内容を考えましても、内閣に白紙委任して、国会の関与が利かない法案を通しているというのは、根本的におかしいと思います。

 先日の参考人質疑でも、井原名誉教授がおっしゃいました。これだけ重要な法案にもかかわらず、白紙委任に近い法案審議は国会軽視と言え、民主的な手続の面から改善を強く求めると。これは、手続でも問題があるというのは、やはり内容的にも、国民、生活者不在の経済安保に行き着く、今既に行き着いているわけです。

 この間の質疑でも明らかになってきましたが、3月23日の立憲の大串委員、そして3月30日の立憲山岸委員の質疑によりますと、経済安保ビジネスに絡むビジネスマンとしての國分俊史氏と経済安保の行政トップである藤井氏が深い関係性にあることが、情報公開請求などで明らかにされました。

 この法案は、アメリカの戦争準備への加担であり、国内の軍事的な研究開発の拡大に向かっていて、そこでは安保ビジネスでおいしい思いをする一部の企業や個人も生まれるものであって、でも、これは戦争から経済的に国民や生活者を守るためのものではない。

 佐橋教授も昨日の質疑のときにおっしゃっていましたけれども、御自分が若い又は中堅の研究者の代表として、研究者の恵まれない処遇について真剣に語っておられました。だから、研究者が夢のあるような日本社会を実現してほしい、そういう思いもこの法案の中に込められていたと思います。

 しかしながら、本日、小林大臣も、研究者に対して、任期つきの研究者、非常勤の研究者というのは、流動性も高まるし、悪いことではないというふうにおっしゃっていて、この経済安保という間口を通してすら研究者が引き続き報われないということもあるのであって、やはり根本的に、佐橋先生が言うような、研究者が安定して研究ができて、日本や世界の、人類に貢献できるような研究、そういうものとこの法案というものは非常にほど遠いものであるなというふうに思いました。

 それから、萩生田大臣が言うように、日本が自分でマスクすら調達できなくなっているということは非常に問題があると思います。そうであれば、日本が数十年かけて自らの手で生産体制を海外にあえて移してきたということが、これがいかに誤りだったかということがやはり話されるべきではないでしょうか。そして、その転換を本気で考えるのであれば、本気でやるのであれば、まず、ベースとしての現状、他国の生産にすごく頼っているこの日本の経済の現実を見据え、今、今を生きる国民や労働者の生活にとっての安全保障というものを考えていく必要があると考えます。

 資料を御覧ください。パネルはこちらです。

 政府が重要物資と事実上位置づけている半導体、レアアース、蓄電池、医薬品の四分野における中国依存の現状を見ると、半導体に関して、中国からの2021年の輸入は、輸入総額の17.19%を占め、台湾に次いで2位となっています。レアアースに関しては、中国からの輸入割合は62%を占める。蓄電池の負極の原材料で黒鉛、中国の世界シェアが62%なんですけれども、日本はその輸入の92%を中国に依存しています。医薬品では、局所麻酔剤、血液代用剤などなど、8つの薬剤の輸入に関して中国が主要国となっています。また、後発医薬品に関しても、その21%を中国に依存しています。

 それ以外の面でも、日経新聞が調査した主要商品・サービスシェア調査によると、中国企業のシェアが3割を超えている品目は、液晶パネル、電池部材、パソコン、洗濯機など、非常に私たちの生活に重要なもの、15に上っているといいます。

 大臣に伺います。しばらく中国の生産に頼るのはいや応なしに続くと思われませんか。

小林国務大臣 いろいろ委員から貴重な御示唆をいただきましたが、何点かまとめて申し上げますと、アメリカの戦略に日本が組み込まれるような、そういうようなくだりがありましたけれども、別にそういうことを目的としているわけでもない。

 研究者の環境改善、これは重要だと思いますけれども、この法案で全て何から何までやるわけではないですが、科学技術担当大臣でもありますので、そこはしっかりやっていきたいと思います。

 あとは、経済合理性だけに任せていたことによって、今委員は一例を出されましたけれども、様々な物資におきまして、やはりこのサプライチェーンというものを真摯に検討していかなければならない、そういう必要性というものが、国民の理解も高まってきたと思っておりますので、今回こういうものを出しているわけでございます。

 別に特定の国を念頭に置いているわけではございませんが、国民の生命に不可欠であって国民生活あるいは経済活動が広く依拠している物資の中で、幾つか要件をつけましたけれども、そういうものがあれば、この法律が成立するということを前提に、公布の日から9か月以内にこのサプライチェーンのパートは施行することになっていますので、その時点までに必要な物資というものをしっかりと特定重要物資として指定をし、国民の暮らしをどういうときであっても守れるような、そういう国に少しでも近づけるように努力を続けてまいります。

大石 大臣が、この法案で全て網羅できるわけではない、全てではないとおっしゃっていて、そのとおりだと思うんですね。でも、この法案がこの国会でも最重要の法案として審議されていますし、皆さんもそのような御認識です。だからこそ、この法案なのか、今この法案なのか、違うんじゃないんですか、違うとしたら何でこの法案をやっているのですかという背景として、そういった、アメリカ追従であるとか、中国包囲網という中で、これが最重要の法案となされてしまっていて、そのマイナス点の方が大きいんじゃないかということを申し上げてきました。そして、大臣も、この法案は全てを網羅できるものではなくて、国民のためのというふうにおっしゃっていました。そういうことを言いたいんです。

 私は、この国に必要なものをまず法制化を急ぐべきだと考えているんです。なぜこの法案が最重要法案になってしまうのかということなんです。末端の生活者や労働者の生活を今すぐに改善していくための積極財政の法案こそ今審議されるべきであって、なぜこのマイナスの法案なのかと。今やるべき、消費税廃止ですとか、ガソリン税廃止ですとか、そのために国債を発行していく、そういったことがなぜ最重要法案にならないのか。大臣の範疇では網羅できないかもしれませんけれども、今これが一番重要な法案として審査され、しかもマイナス面が非常に大きいということを考えていただきたいと思うんです。

 そして、対外的にやるべきということで、この法案に関わることですけれども、国民の安全を守り抜くという考えからスタートしていただけるのであれば、グローバルな激しい市場競争を規制していこう、底辺への競争をやめていこうという働きかけが必要です。

 底辺への競争、国家が外国企業の誘致や産業育成のために減税をしたり基準緩和を競うことで、労働環境や自然環境、社会福祉などが最低水準へと向かうことをいいます。自由貿易やグローバリゼーションの問題として指摘されています。

 世界で法人税を下げる競争を続け、新興国の労働者を奴隷使いして、その一方で、国内の労働者も非正規雇用にして産業をすかすかにしてきた。ISDS条項で自分たちの水を守ることすらできない……

上野委員長 大石君、持ち時間が経過しておりますので、取りまとめをお願いします。

大石 公害などの対応すら許されなくなっている、ここへの反省なしに、対外的な意味での国民の安全もあり得ない。残念ながら、本法案はそのような視点とは逆方向だなと感じております。

 時間が終わりましたので、質問を終わります。

 

 

※衆議院、内閣委員会 会議録より転載

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