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2022年3月31日【内閣委員会】経済安保法 参考人質疑(審議②)

上野委員長 次に、大石あきこ君。

 

大石 ありがとうございます。れいわ新選組の大石あきこです。

 参考人の皆様、よろしくお願いします。

 今、本当に激動の国際情勢で、それはウクライナをめぐることもそうですけれども、いろいろ、中国とアメリカで世界戦争が起きちゃうんじゃないかとか、第三次世界大戦が起きるんじゃないか、核戦争が起きちゃうんじゃないか、そういう心配に今この世界が包まれている中で、こういった法案の議論もされているんだと思います。

 佐橋先生が冒頭に、そういう情勢とおっしゃっていて、拡張主義という言葉も出されていました。私は、こういった拡張主義とか、あるいは激しい市場の競争、そういったことを自制を促していくことが今求められているんじゃないかな、そういう立場で御質問したいと思います。

 これが私は、さきの第二次大戦の血の教訓じゃないのかなと思っています。だから、今、世界全体がすごく危ない方向に行っていて、私自体もすごく怖いです。だから、危ない方向に行ったらあかんと、そういうことを求めていくのが、今、この日本の政府の役割じゃないかな、私はそのように思います。

 この法案を考えるに、拡張主義への自制を促すとか、激しい市場競争をみんなでやめていくとか、そういう方向じゃなく、激しい市場競争ありきで、日本もしたたかにいくんだとか、中国は信頼できない国だから依存度を下げていくんだとか、これはこれで、現実味あるのかなと、すごく疑問に思っています。

 先ほどからも、日本は資源を掘っても出てきませんからとおっしゃっていた先生もいらっしゃいます。実際、たった一つの例ですけれども、蓄電池の原料で黒鉛一つ取っても、世界の中国のシェアが62%、日本は中国への輸入依存度は92%、これを何とか脱却できるのかな、それが本当に現実論なんですかと。しかも、政府が関与してうまくいくのかな。自由が侵害され、戦時だからとか、経済安保だから我慢しろ、果てには罰則の議論までされる党もあります。

 こういうことが歴史を巻き戻すのではないかなと思って私は非常に懸念していますし、何より、今この国に生きる国民、生活者が、この経済安保という方向性によって逆に被害を被らないか、被る可能性が高いと私は思っているんです。

 今求められている、世界中の国民ですけれども、求められているのが何かと考えたとき、私は、底辺への競争からの脱却ではないかと思っているんです。

 このような方向性で、拡張主義に走り、新たな市場獲得に走り、でも、それはやればやるほど格差拡大しているじゃないですか。

 半導体の話、いっぱいこの委員会でも出てきます。でも、この半導体という産業の中で、シリコンサイクルと呼ばれているんですけれども、非常に好況と不況の波が激しくて、じゃ、そのはざまで何が起きているかというと、その半導体の工場が閉鎖されたりとかで大量にリストラされる。生活者、労働者、そういうところが無視されるというか見えない中で国益というお話をされている。

 これは、結果として生活者の安全を保障しているのか、逆ではないのか。もっともっと安定した雇用、世界の人々が底辺への競争から脱却できるための、各国で自制を促していく、国際競争を促していく、そういう議論が今一番必要じゃないか、日本政府にできることがあるんじゃないか、私はその思いでいっぱいなんです。

 これは現実論ではないとおっしゃる方もいらっしゃるかもしれないけれども、そうでもないと思うんですね。例えば法人税、余りにも国際競争で下げ過ぎて、さすがに下げ過ぎたやろということで、G7などでも、法人税は全体として上げていこうという話もなされているわけです。それのスピードはまだまだ緩いわけです。

 世界の人々が普通に食べて、いい研究したり、安定した生活をしていくという水準で見ても、そういったことがまだまだ足りていない。だから、そういうことをまずやるべきじゃないのかな。それがどうせできないだろうということで、自衛とか、いろいろな形でやっていく。

 さっき佐橋先生、比較的若い研究者の方だと思うんですけれども、やはり研究者が夢が奪われてきたというのが本当に切実だと思うんです。でも、このままの話で時流に乗って、軍事のことなら研究費が下りるよという仕組みがつくられたら、やはり、切実な研究者の人はそっちに自分の意思で乗ってしまうんじゃないかな。それは結果として、日本の、又は人類の発展に資するのだろうか。私はそうは思わないんです。

 というような私の意見を述べまして、皆様にお一人ずつ御意見いただきたいなと思います。この参考人の表の、上から順に行っていましたので、逆から順に、井原先生、鈴木先生、村山先生、佐橋先生の順にお伺いしたいと思うのですが、よろしくお願いします。

上野委員長 大石君、何をお伺いすればいいんですか。

大石 失礼いたしました。

 私としましては、この世界の危機の中で、拡張主義というものの自制を促すこと、それから底辺への競争というものを脱却していくこと、これに関して、日本政府の大きな役割があって、これが一番大事だと思っているんですが、それをどう思われるのか、御意見をお伺いしたいです。

井原参考人 ありがとうございます。非常に幅の広いお話だったので、どのようにお答えしたらいいのかちょっと迷っているんですけれども。

 現在、この法案を議論しているということで、既に、緊張が隣国へ広がっていくような、そういう議論が含まれているというふうに私は理解しているので、やはり力と力、これは経済力の力と力も力なんですね。だから、何としてでも、何度も言うようですが、国際協調主義をやはり育てていくような何かいい知恵を生み出さなければやっていけないのではないか、対抗的な問題だけ立てて、その場で解決する方向ではない、もっと長いスパンの議論が必要なんだろうと思うんです。

 ちょっと抽象的ですが、私はそのように考えております。

鈴木参考人 大変哲学的な問いかけなので、私のような国際政治を専門にしている者に答えられるかどうかよく分からないんですけれども。

 拡張主義を自制するということについては、まさにそれによって、世界がいろいろな、対立関係ですとか摩擦が生じる、こういう状況が生まれることは恐らく不可避であろうというふうには思います。じゃ、そこで、どういう態度というか、どういう選択肢があるんだろうかというふうに考えると、そういう競争から降りて、余生を過ごすというか、隠居のような生活をするのか、それとも、そういう競争の中で何とか生き延びていくということを考えるのか、それとも、その中で、様々な他国からの圧力、そういったものからいかにして我々の生活の安定を維持するのかということを考えたときに、恐らく、今回の経済安全保障推進法案は、三番目の、国内の生活、経済活動の安定ということを目指したものだというふうに私は理解をしています。

 そういう意味では、どれが正解かというのは私は分かりませんけれども、しかし、そういう方向性を持ったものとして、現実の世界で起きている競争、これに適切に対応していくということが恐らく政府に求められていることであり、この経済安全保障法案はそうした対応の一つの形としてあるものなのではないかというふうに考えております。

村山参考人 世界が危ない方向に向かっていて、自制を促さなければならない、まさにそのとおりだと思います。

 これを経済安全保障的に考えるとどういうことかといいますと、今何が起こっているかというと、米中間で経済競争にあったのが、その経済競争の後ろにナショナリズムが入ってきているんですね。したがって、ナショナリズムが入っているから、ともかく自分にいい条件を引き出そうとして、関税をかけたり補助金をつけたりして、そういう競争が始まったわけですよね。

 ここまでは経済でいいんですけれども、これを自制を促さなきゃならないというのは、それに軍事がついたらどうなるかという話なんです。これは経済安全保障の話です。だから、軍事力をちらつかせて経済交渉に入ったらどうなるか。これはかなり危険な道に入っていくわけです。そこはやはり自制が必要で、日本の役割としては、そこを何とか米中間で押しとどめて、紛争にいかないようにするというのが日本の経済安全保障戦略としてあると思うんですね。

 特に私が今一番懸念しているのが、やはり台湾なんです。台湾にTSMCなどの半導体の拠点がある、それを米中が奪い合っているような状態なんですよね。だから、これが向上すると、恐らく、経済でありながらも軍事がついてくるような、そういうことになってしまう。

 これは非常に危険なので、そこで、やはり日本の役割としては、何とか両国に自制を促して、軍事紛争までいかないようにとどまらせる、そこが日本の大きな役割、経済安全保障上の大きな役割というふうに考えております。

佐橋参考人 ありがとうございます。非常に知的刺激にあふれる質問で、本当に面白くて、いろいろ考えていたんですけれども。

 相手に自制を強いるということがやはり非常に重要だと思うんですよ。そこは本当に私もそう思っていて、ただ、そのための手段というのが、やはり抑止というのが非常に重要であろうというふうに思います。そして、その抑止にも資するんですけれども、相手国より優位性を確保するということが重要なんですね、理論的には。そのために、経済安全保障政策ないし今回の法案に含まれている内容は十分に資するのではないかというふうに思います。

 ただ、もちろん、それに加えて、相手に自制を強いるためには、究極的には外交の役割というのも存在しております。ですので、抑止だけではなく外交、これをいかに組み合わせていくのかということが解になるわけですが、ただ、少なくとも、こちら側が抑止するに足るに十分な優位性を確保しておかなければ相手の貪欲な行動を防ぐことはできませんので、そういった意味で、こういった取組は重要だというふうに思います。

 そして、生活者の利益になるかということなんですけれども、これは、大きな意味での富の配分というのは全く別の法案のスキームの話だというふうには理解しております。ただ、他方で、今回の法案に含まれているような先端的な技術開発だとか又はインフラの防護、こういったものは日々の生活を支えるものであるわけです。例えば有事が発生したときに、やはりインフラが、又はサプライチェーンがしっかり確保されていなければ、困るのは真っ先に国民、市民生活であります。そういった意味でも、実はこれは生活者の利益にもなるというふうにも思います。

 以上で私の答えにさせていただきます。

大石 ありがとうございます。

 優位性の確保というのが自制を強いるというお話だったんですけれども、そういう考え方も一つなのかもしれませんが、そうなのかなというところもあったんです。ほかの国が悪いと言う前に、やはり、この国で数十年行われてきたことを振り返ってみても、自国の経済政策の失策であったりですとか、アメリカに追随した結果ということだったりとかということは、前回の委員会での質問で私の意見をさせていただきました。なので、私は、違う世界を佐橋先生も一緒に目指してほしいなと思いました。本当に本気です。

 質問を終わります。ありがとうございました。

 

※衆議院、内閣委員会 会議録より転載

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