「グローバル企業のための貿易協定であるRCEPは、非民主的であり、不平等を深め、労働者と社会を犠牲に」アジア太平洋地域の労働組合のRCEP協定反対声明(和訳紹介)

RCEPの交渉妥結に向けてバンコクに集まった各国首脳(11月4日)(写真:内閣広報室)

大石あきこです。

「RCEP」なるものが閣議決定され、今国会で承認をめざすそうです。みなさん、ご存じでしたか?
グローバル企業が東アジアで暴れまわるためのもので、働く人には危険な協定です。

以下、報道されているものから。

 

RCEP協定案を閣議決定 中韓と初の経済連携協定 2021年2月24日

政府は24日、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定案を閣議決定した。いまの通常国会での承認を目指す。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF2261F0S1A220C2000000/

 

ということです。
中国や韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国など15カ国が参加するもので、発効すれば世界の国内総生産(GDP)の3割を占める最大の広域自由貿易協定(FTA)となるらしい。TPPについては国会でも大きな問題になりましたが、RCEPって、いつのまに?って感じですよね。

 

政府のページはこちら

「地域的な包括的経済連携」 (RCEP)協定〔東アジア地域包括的経済連携〕

地域的な包括的経済連携(RCEP)協定は、2012年11月に交渉を開始し、2020年11月15日に署名されました。

https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/epa/rcep/index.html

 

内容は、食料品の貿易や、投資、人の移動など、多岐にわたる協定です。東アジアをめぐり、中国とのショバ争いの側面が強いですが、ただでさえ、グローバル競争によって、日本国内の産業が東南アジアに流出している中で、より国内産業の空洞化、中小企業淘汰を進行させるものになります。労働者同士の激しい競争により、安定した雇用がますます奪われる方向です。

 

以下、11月に発表されたものですが、アジア太平洋地域の労働組合連合の反対声明を訳してみました。
コロナ禍でやってる場合じゃないだろ、方向まちがってるだろ、と批判するものです。
グローバル企業のための協定は、世界の働く人たちが連帯して、やめさせましょう!

 

原文:公正な貿易を求める組合連合(UNIONS FOR TRADE JUSTICE)HP

 

https://tradejusticeunions.org/2020/11/resources/labour-unions-in-asia-pacific-condemn-rcep-deal/

以下、大石訳(転載は歓迎)

アジア太平洋地域の労働組合がRCEP協定に反対声明

2020年11月12日

 

 

アジア太平洋地域は、このかんずっと、新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミックの渦中にある。COVID-19の感染者が増え、経済が回復できず、医療システムがひっ迫し、雇用が失われ続けている。にもかかわらず、この地域の15カ国の首脳は、2020年11月15日、物議をかもしている「東アジア地域包括的経済連携」(RCEP)に署名すると決定した。これは、驚くべきことである。私たちは、アジア太平洋地域の建設、製造、農業、輸送、フードチェーン、公共サービス、専門サービス、教育などの部門の労働者を代表する労働組合として、この決定に強く反対する。

 

RCEP交渉は7年以上にもわたって行われ、その間、交渉内容は隠されてきた。署名の直前となっている今も、取引条件はいまだに公開されていない。リークされた文書の分析を通じて、私たち労働組合はRCEPが労働者の権利、持続可能な開発、民主主義に与える影響について一貫して懸念を表明してきた。

 

私たちは、貿易と経済協力は、雇用や持続可能な開発につながると認識している。しかし、グローバル企業によるグローバル企業のための貿易協定であるRCEPは、非民主的であり、不平等を深め、労働者と社会を犠牲にして資本の経済的・政治的権力を拡大させるおそれがある

RCEPは、アジア太平洋地域における自由貿易・投資ゾーンに向けた布石であり、この道が誤りだということは、コロナパンデミックが改めて示している。各国は、RCEPのような自由貿易の推進ではなく、経済の再生と公共財の拡大に尽力すべきだ。多くの途上国は、COVID-19ワクチンやその他の医薬品について、世界貿易機関(WTO)のTRIPS協定が規定する知的財産権保護の対象外とすべきだという提案を支持した、これは正しい道への一歩だ。RCEPやその他の知的財産権保護の貿易協定は、各国がワクチンを確保する能力に支障を与える。

 

新自由主義的な経済統合が失敗したことは明らかだ。TPP協定よりトーンダウンした新TPP(アジア太平洋地域における経済連携協定/CPTPP)〔アメリカのTPP離脱後に新TPPとして再開〕と比べても、RCEPはさらにトーンダウンしている。

しかし、この地域の開発途上国の多くが、RCEPのせいで政策の余地を失ってしまうだろう。今、公正な経済回復のためには、政府が財政的にも政策的にも十分な対策を講じなければいけないと、国連貿易開発会議が警告しているときだというのに。

最近の研究では、これまでにいくつかモデル推計されていたようなRCEPによる経済的利益は、実際にはうまれないと示された。SMART モデルによると、輸入関税の引き下げによる経済効果は、ほとんどの開発途上国では誤差程度のものだという。また、出張の渡航者は、入国および一時滞在の手続き円滑化のメリットがあるものの、労働者は底なしの競争にさらされて労働条件が悪化し、とりわけ移民労働者の労働条件は深刻化する。より良い解決策は、まともな仕事(ディーセント・ワーク)、質の高い公共サービス、持続可能でインクルーシブな開発の促進といった協調的な地域協力だ。

 

国連は、今、この50年間で最大の世界的な食糧危機の渦中にあると警告している。このような状況の中で、各国政府は、飢餓と栄養不良に対処し、食料安全保障と、人々の栄養を得る権利を保障するためにあらゆる対応をするべきだ。食糧と農業は、公共の利益として保護され、規制されるべきだ。グローバル企業の支配を強めるような自由化や商業化を許してはならない。RCEPは、国連が警告する危機を深刻化させるおそれがある。

 

RCEPは、政府のコロナパンデミックへの対応力を、現在のみならず、将来的にわたって妨げる。RCEPのルールのせいで、政府が公共の利益を守るための規制を導入できなくなることは、国の主権を損なうことであり、私たちの加盟組合が代表する何百万人もの労働者の権利を奪うことである

 

私たちは今回のRCEP署名に反対し、今後も、RCEP の制定・批准・実施プロセスに介入するために、加盟組合や同盟国と連携する。労働組合運動には、現在の国際自由貿易体制に対抗し、人々の権利と民主主義を保護する重要な役割があると、私たちは確信する。今後も、アジア太平洋地域と近隣地域において、労働者の権利と経済的公正性を確保するために闘う。

 

文責:以下の団体で構成する「公正な貿易のための労働組合連合(Unions for Trade Justice)」

• Building and Woodworkers International, Asia-Pacific 

• Education International, Asia Pacific 

• IndustriALL 

• International Transport Workers' Federation 

• International Union of Food workers, Asia-Pacific 

• Public Services International, Asia-Pacific 

• UNI Global Union

 

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